バスで高知港に着いた。船の前で記念写真を撮った。乗船して少しすると、銅鑼が二度鳴った。九時二十分出港。船室に荷物を置くと、みんなで甲板に出た。船がゆっくり動き出した。 カップルが夜の海を眺めている。沖に出ると外は真っ暗になり、うねりが出てきて船が揺れ始めた。気分がよくないので、甲板にしばらく出ていることにした。はるか彼方に陸の光を見た。波は相当荒くなってきた。眺めていると、吸い込まれるような気がした。 手すりに寄りかかり、ぼうっとしていた。潮風が頬を撫でる。快さにすうっと意..

 バスで高知港に着いた。船の前で記念写真を撮った。乗船して少しすると、銅鑼が二度鳴った。九時二十分出港。船室に荷物を置くと、みんなで甲板に出た。船がゆっくり動き出した。
 カップルが夜の海を眺めている。沖に出ると外は真っ暗になり、うねりが出てきて船が揺れ始めた。気分がよくないので、甲板にしばらく出ていることにした。はるか彼方に陸の光を見た。波は相当荒くなってきた。眺めていると、吸い込まれるような気がした。
 手すりに寄りかかり、ぼうっとしていた。潮風が頬を撫でる。快さにすうっと意識が遠くなる。気がつくと、黒い海が割れて、白い歯をむき出している。
 疲れが出たので、船室に戻って横になった。船は縦に揺れるので、進行方向に頭を向けることにした。その方が酔わないらしい。船と一緒に体はうねりを越えていく。
 深夜一時頃、目が覚めた。周りはほとんど眠っている。中にはこっそり飲酒している生徒もいたが。海を見に行ったが、はるか沖を走っているらしく、明かりは何も見えない。真横に眠る同級生は、真っ白のジーンズ姿だった。片思いの人のことでも夢に見ているのか。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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