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十六歳の修学旅行(22)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
Japanese - November 08, 2020 16:52Books Arts Society & Culture 日本文学 コンピューター ジャズ 電子本 電子書籍 文学賞 青空文庫 epub pdf 高野敦志 Homepage Download Apple Podcasts Google Podcasts Overcast Castro Pocket Casts RSS feed
大歩危駅に戻った。喉が渇いたので、ジュースを飲んだ。行きに急行券を無駄にしてしまったので、帰りの分を買う気にならなかった。各駅停車の下りが来るまで、一時間四五分もあった。駅弁を買って食べ、あとはおしゃべりすることにした。大学進学のこととか。 十二時五十分の下り列車に乗った。同級生の勧めで、旧型の客車に移動した。「そのうち、こういうのはなくなるんだよ」 車内の壁はニスを塗った木製で、床も焦げ茶の木製。終戦直後に走っていた車両のようだ。座席にようやく座れた。皆疲れているらしく、..
大歩危駅に戻った。喉が渇いたので、ジュースを飲んだ。行きに急行券を無駄にしてしまったので、帰りの分を買う気にならなかった。各駅停車の下りが来るまで、一時間四五分もあった。駅弁を買って食べ、あとはおしゃべりすることにした。大学進学のこととか。
十二時五十分の下り列車に乗った。同級生の勧めで、旧型の客車に移動した。
「そのうち、こういうのはなくなるんだよ」
車内の壁はニスを塗った木製で、床も焦げ茶の木製。終戦直後に走っていた車両のようだ。座席にようやく座れた。皆疲れているらしく、すぐに眠ってしまった。僕は吉野川をずっと眺めていた。
各駅停車だけれども、この列車も新改は通過だった。引き込み線の先に、新改の駅舎が見えた。あそこに犬がいるんだなと思った。そのうちうつらうつらして、疲れも取れてきた。土佐山田で生徒が入ってくるまで、車内は静かだった。(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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