僕が初めて阿刀田氏の顔をテレビで見たのは、氏が直木賞を受賞したときだった。1979年だから、僕が高校生だった頃のことだ。氏は国立図書館の司書だったこともあり、雑文書きから始まり、小説を書くことを勧められ、作家の道を歩み出した。文学賞の受賞はその後からという経歴を持つ。 この本は小説作法の本だが、これを読んだらすぐに小説が書けるかというと、そういう類いの本ではない。小説作法を体系的にまとめた古典的な著書としては、木村毅の『小説研究十六講』などがある。阿刀田氏の本は小説が書ける..

 僕が初めて阿刀田氏の顔をテレビで見たのは、氏が直木賞を受賞したときだった。1979年だから、僕が高校生だった頃のことだ。氏は国立図書館の司書だったこともあり、雑文書きから始まり、小説を書くことを勧められ、作家の道を歩み出した。文学賞の受賞はその後からという経歴を持つ。
 この本は小説作法の本だが、これを読んだらすぐに小説が書けるかというと、そういう類いの本ではない。小説作法を体系的にまとめた古典的な著書としては、木村毅の『小説研究十六講』などがある。阿刀田氏の本は小説が書ける人が、さらに腕を磨くための本だと言える。
 小説作法のキイ・ポイントしては、読者の推測を巧みに肯定することとして、「読者の呼吸を読むこと」が挙げられている。これもすでに小説らしきものが書けるようになった者には、示唆的な言葉である。そもそも小説作法を一から学ぶ必要があるのだろうか。長編小説を書くなら、小説作法の全体を知ることは必要だが、短編に関しては、人生経験と幅広い読書経験、豊富な知識に、言葉に対する繊細な感覚があれば、書けてしまうのではないか。
 氏が短編小説の名手なのは、博学だという側面が大きい。国内外の文学、神話、歴史に通じていれば、それを組み合わせていくことで、ちょっとした短編は書けてしまう。
 ポスト構造主義者のジュリア・クリステヴァは「間テキスト性」ということを言い出した。直訳では何のことか分からないが、「テキスト相互関連性」と訳せば、何となく分かるだろう。すべてのテキストには関係性があり、全く独創的なものなどなく、かつて書かれたものを組み合わせて作られたものだということである。阿刀田氏の小説作法とは、まさしくそれである。(つづく)


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