フランス文学者中条省平氏の小説作法第二弾である。中条氏自身は小説は書かないが、「灯台もと暗し」の作家志望者にとっては、編集者からされるような、客観的な指摘をしてもらえる。 今回は神話やミステリー、マンガ、比喩など幅広い問題を扱っている。ここで注意しなければならないのは、海外文学に学ぶ際の問題である。日本文学だけ扱っていると、どうしても視野が狭くなる。海外の作家の常識に囚われない冒険が、新たな文学を生み出してきたわけだが、文章そのものについては、海外文学に学ぶ際には注意を要す..

 フランス文学者中条省平氏の小説作法第二弾である。中条氏自身は小説は書かないが、「灯台もと暗し」の作家志望者にとっては、編集者からされるような、客観的な指摘をしてもらえる。
 今回は神話やミステリー、マンガ、比喩など幅広い問題を扱っている。ここで注意しなければならないのは、海外文学に学ぶ際の問題である。日本文学だけ扱っていると、どうしても視野が狭くなる。海外の作家の常識に囚われない冒険が、新たな文学を生み出してきたわけだが、文章そのものについては、海外文学に学ぶ際には注意を要する。
 海外文学を翻訳で読む場合、すでに原文とは異なるものを読んでいる。翻訳が直訳の場合、日本語としてはいびつな文章を読んでいるのだ。不自然極まるものや、文学臭がひどがったり、紋切り型の表現が使われていたりする。これは若い頃に僕自身がフランス文学を翻訳で読み、強い影響を受けて、自分の日本語が壊れそうになった経験があるからである。
 中条氏はくだくだしい描写をするなと言う。物語の本筋と異なる描写をすると、そこで物語の時間が停止してしまうと。小説の醍醐味が描写にあると思っている者が陥りやすい罠である。会話を軽視したり、心理描写にこだわったりするのも。
 中条氏の指摘は、ある程度小説らしいものが書けるようになった人には、大いに啓発的である。川端康成の『眠れる美女』や室生犀星の『蜜のあわれ』にしても、文豪が晩年に到達した世界であり、初学者にはあまり参考にならないが、一線を越えられずにいる自分のような人間には、大いに示唆的である。
 なお、本書はメタローグから刊行され、のちにちくま文庫で『小説家になる』と改題された。メタローグで刊行された『小説家になる』は、ちくま文庫では『小説の解剖学』と改題されている。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en


Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38


にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

amzn_assoc_ad_type ="responsive_search_widget"; amzn_assoc_tracking_id ="faucon-22"; amzn_assoc_marketplace ="amazon"; amzn_assoc_region ="JP"; amzn_assoc_placement =""; amzn_assoc_search_type = "search_widget";amzn_assoc_width ="auto"; amzn_assoc_height ="auto"; amzn_assoc_default_search_category =""; amzn_assoc_default_search_key ="";amzn_assoc_theme ="light"; amzn_assoc_bg_color ="FFFFFF";
Twitter、facebookでの拡散、よろしくお願い致します!

Twitter Mentions