僕がまだ三十一歳のとき、四国一周する旅に出た。新幹線で岡山駅に着くと、時間が中途半端だったので、福山行きの快速電車に乗った。倉敷に寄ってみたかったからである。 蔵が建ち並ぶ美観地区までは、1キロほどあった。堀では白鳥が三羽、水中に首を突っ込み、餌を探していた。川岸に茂る柳は、枝を左右いっぱいに広げて、対岸の家並みがよく見えない。石橋の上に立ってみたが、事情は変わらない。 古めかしい土蔵の前に、人が大勢集まっている。門の中を覗くと、大原美術館であることに気がついた。高校二年生..

 僕がまだ三十一歳のとき、四国一周する旅に出た。新幹線で岡山駅に着くと、時間が中途半端だったので、福山行きの快速電車に乗った。倉敷に寄ってみたかったからである。
 蔵が建ち並ぶ美観地区までは、1キロほどあった。堀では白鳥が三羽、水中に首を突っ込み、餌を探していた。川岸に茂る柳は、枝を左右いっぱいに広げて、対岸の家並みがよく見えない。石橋の上に立ってみたが、事情は変わらない。
 古めかしい土蔵の前に、人が大勢集まっている。門の中を覗くと、大原美術館であることに気がついた。高校二年生、十六歳のとき、修学旅行で訪れたので、土色の壁には記憶があった。
 あの日は中を見学して、美少女の絵に見とれた同級生を、皆でからかったりしたものだが。高校の同級生とは、卒業してからは会っていない。皆どうしているんだろう。思い出にひたっていたわけだが、今回はゆっくり見て回る時間がない。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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