死者の記憶を持つ子供たち（３）

　イスラム教徒の夫婦に産まれた息子は、戦争で死んだ兄について語る。前世の兄のことが忘れられない。自分自身も死んだ後、人生について学ぶために、この世界にやって来たのだ。「学べなければ、何度でもやり直しだ」と神さまに告げられたと。
　これは人生は一度きりだというイスラム教の教えにそぐわない。キリスト教の場合もそうだろう。輪廻転生について語るのは、ヒンズー教や仏教、キリスト教に席巻される以前の古代ヨーロッパ人の信仰だからだ。
　ロバート・モンローが始めたヘミシンクや「ゲートウェイ・エクスペリエンス」の世界観でも、人間の意識は死後も残ること、しばらく休息した後、人生について学び直すために、転生することを説いている。
　自分がロックフェラーの屋敷で生活していたという記憶を持つ少女は、無理やり連れ帰ろうとした実の母親を、誘拐犯だと言い触らす。前世の自分に何があったのか、それを知ることで、前世との決別を果たし、現世を生きることができるようになる。（つづく）

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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