雨が降り出したので、小室山に行くのはやめて、ホテルの車で川奈駅へ送ってもらった。駅に着くと、空が明るくなり、日が差してきた。「しばらくは雨が降らないよ。熱海も夕方までは曇だし」 前回の旅で行かれなかった橋立吊橋に、友人は行きたがった。急遽、伊豆高原の駅で降りて、前回の道をたどっていく。あのときと同様に、水音の響く川沿いの小道を進んだ。夕方なのにたちまち闇に包まれ、足もとも見えなくなった前回が「闇の中」なら、今回は森の道を進む「緑の中」にいた。石橋の脇を過ぎると、舗装された道..

 雨が降り出したので、小室山に行くのはやめて、ホテルの車で川奈駅へ送ってもらった。駅に着くと、空が明るくなり、日が差してきた。
「しばらくは雨が降らないよ。熱海も夕方までは曇だし」
 前回の旅で行かれなかった橋立吊橋に、友人は行きたがった。急遽、伊豆高原の駅で降りて、前回の道をたどっていく。あのときと同様に、水音の響く川沿いの小道を進んだ。夕方なのにたちまち闇に包まれ、足もとも見えなくなった前回が「闇の中」なら、今回は森の道を進む「緑の中」にいた。石橋の脇を過ぎると、舗装された道の限界まで来た。
 あの日は森が切れた先に、ぼんやり海が浮かび上がっていた。「この世とあの世の境」に来てしまった気がしたが、今回は空と海がはっきりと見えた。
 ただ、水平線を見ると、太く白い線が一直線に広がっている。層のような高みをもって、ゆっくりとこちらに迫りつつあるようだ。今朝方、八丈島沖でやや強い地震があったので、津波が迫っているように見えた。ただ、ニュースでは津波の恐れはないと話していたけれど。
「あれは光の屈折だよ」と友人が言った。確かにそうだろう。しかし、いつの日か襲いかかる沖の津波は、陸地からはあのように見えるのだろう。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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