魂は存在するのか

　医学は精神活動を脳の機能と規定する。脳死状態に陥れば、意識はなくなり、人間としては死ぬと教えている。その一方で、脳の機能が失われている間に臨死体験をしたという報告もある。
　臨死体験が単なる幻覚や妄想として片づけられるなら、肉体の死をもって意識は消滅するという従来の説明に、同意せざるを得ないのだが、精神活動は脳にだけ記憶されているわけではないらしい。
　臓器移植を受けた人は、性格や趣味が変化することが多い。それは亡くなったドナーから引き継いだものである。だとすると、記憶は脳だけではなく、臓器にも保存されていることになる。脳の機能が失われている間も、臨死体験をすることがあるのは、意識が脳に局在するものではなく、全身に存在するからだという仮説が成り立つ。
　その一方で、魂は肉体の死後も生き続け、転生するという主張もされている。転生した人間は、幼い時には前世の記憶を保持している。精神的なトラウマばかりでなく、銃弾で撃たれた箇所が、生来の傷として生まれ変わった人物の体に現れることもあるのだ。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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