僕がエドガー・アラン・ポーの小説を最初に読んだのは、日本語ではなく、英語の原文だった。大学受験で予備校に通っていた僕は、英語の長文読解と、小説を読む楽しみのために、ポーの小説を選んだのである。ただ、原書ではなく、対訳でもなかった。難しい単語にのみ日本語訳がついていたので、英語で作品を理解するのに役に立った。それにしても、変わった単語で修飾するのが好きだな、と感じたものである。 大学に進学してからは、創元推理文庫の「」『ポオ小説全集』全四巻と『ポオ詩と詩論』を翻訳で読んだ。し..

 僕がエドガー・アラン・ポーの小説を最初に読んだのは、日本語ではなく、英語の原文だった。大学受験で予備校に通っていた僕は、英語の長文読解と、小説を読む楽しみのために、ポーの小説を選んだのである。ただ、原書ではなく、対訳でもなかった。難しい単語にのみ日本語訳がついていたので、英語で作品を理解するのに役に立った。それにしても、変わった単語で修飾するのが好きだな、と感じたものである。
 大学に進学してからは、創元推理文庫の「」『ポオ小説全集』全四巻と『ポオ詩と詩論』を翻訳で読んだ。しばらくブランクを経て、四十代になった頃、『エドガー・アラン・ポー ~怪奇と幻想の物語~』という全11話のドラマをDVDで見た。これは多少現代風にアレンジされているが、各作品が30分弱にまとまっており、非常によくできているので、ポーのファンには見てもらいたい映像作品である。
 今回読んだ江戸川乱歩名義訳は、戦前にベストセラーとなったものであるが、実際の訳者は江戸川乱歩ではなく、渡辺啓助・渡辺温兄弟による共訳である。歴史的仮名遣いで、「そそのかす」を意味する「指嗾(しそう)」、オランウータンを表す「猩々(しょうじょう)」など、現代人には死語と思われる漢語が使われているが、日夏耿之介の詩集が好きなら、引きずり込まれてしまうに違いない。ゴシックロマンの荘重な雰囲気がよく出ている。
 どの作品も若い頃読んでいるので、馴染みのあるものばかりだが、暗号解読の「黄金虫」や、思いも寄らぬ犯人を探り出す「モルグ街の殺人」、人間心理の裏を掻く「窃まれた手紙」には、ポーの緻密な論理と奇想が、バランス良く絡み合っている。一方、新聞記事を元にした「マリイ・ロオジェ事件の謎」では、論理過多になっており、読むのに多少疲れた。
 僕が好きなのは、「黒猫譚」や「アッシャア館の崩壊」などの怪奇譚や、渦潮に呑み込まれる奇譚「メヱルストロウム」である。ただ、好きだからといって、修飾過剰な文体を真似してはいけない。ポーの文体は日本語で自身の文体を獲得しようとしている者には、麻薬のような中毒症状を引き起こす。鑑賞して味わうにとどめた方がいい。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en


Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38


にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

amzn_assoc_ad_type ="responsive_search_widget"; amzn_assoc_tracking_id ="faucon-22"; amzn_assoc_marketplace ="amazon"; amzn_assoc_region ="JP"; amzn_assoc_placement =""; amzn_assoc_search_type = "search_widget";amzn_assoc_width ="auto"; amzn_assoc_height ="auto"; amzn_assoc_default_search_category =""; amzn_assoc_default_search_key ="";amzn_assoc_theme ="light"; amzn_assoc_bg_color ="FFFFFF";
Twitter、facebookでの拡散、よろしくお願い致します!

Twitter Mentions