午後一時少し前に、荷物を預けたおばさんの店に行った。マイクロバスに乗って、観潮船の桟橋に向かった。漁船ぐらいの大きさの船に乗った客は、顎髭を生やした少林寺拳法の青年と僕の二人だけ。船長のおじいさんの話では、小さい船の方が渦のすぐそばまで行くそうだ。「一度うちのに乗ったお客さんは、あっちの大きい船には乗れんから」 モーターをフル回転させて、大鳴門橋の橋脚に向かう。手前まで来たところで、船室を出て甲板の柱につかまって、おじいさんの指さす先の渦を探した。青年はしきりに質問している..

 午後一時少し前に、荷物を預けたおばさんの店に行った。マイクロバスに乗って、観潮船の桟橋に向かった。漁船ぐらいの大きさの船に乗った客は、顎髭を生やした少林寺拳法の青年と僕の二人だけ。船長のおじいさんの話では、小さい船の方が渦のすぐそばまで行くそうだ。
「一度うちのに乗ったお客さんは、あっちの大きい船には乗れんから」
 モーターをフル回転させて、大鳴門橋の橋脚に向かう。手前まで来たところで、船室を出て甲板の柱につかまって、おじいさんの指さす先の渦を探した。青年はしきりに質問している。僕はカメラのシャッターを切った。
 渦が巻き始めたとき、いきなり二メートルほど、海の底から沸き立つように、水の柱がせり上がった。瀬戸内側の浅瀬からは、早瀬のように海水がたぎり落ちてくる。大きく左右に揺れて、危うく倒れそうになった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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