星新一の「善良な市民同盟」

　職場を荒らしてとんずらしていた男は、不良物件を売り付けに金持ちの老人の邸宅を訪れる。そこで男は、老人から善良な市民同盟に入るように促される。悪人を駆逐するために、体の水分が抜けて死に至る病原菌をばらまくので、予防接種をした者しか、審判の日には生き残らないというのだ。唯一の条件は、その団体について他言しないということだった。
　男は善良な人間に生まれ変わり、愛する女性との生活も始めるが、審判の日に彼女が恐ろしい病原菌に冒されるのではという恐怖が募る。ついに、他言しないという約束を破り、彼女にも予防接種をしてほしいと頼み込むが、老人は約束を守らなかったとして、男を団体から追放する。
　結果的には、審判の日は訪れず、善良な市民同盟という団体も、悪徳商法でもうけていたことを知る。ただ、その団体に知り合わなければ、大切な彼女とも出会えなかったわけで、団体に関しては両義的な意味合いを含ませている。
　疑問に思ったのは、ばらまくとされた病原菌は、果たして存在していたのかということ。また、予防接種だとして打った成分は何だったかということだ。プラセボの生理食塩水を打っていたのかもしれない。
　正義のために、伝染病のウイルスをまくというのは、地球環境を守るためには人口削減が必要で、新型コロナウイルスを散布する一方で、治療薬のアビガンやイベルメクチンを、市民からは隠そうとする支配層の独善性を想起させる。新型コロナウイルスの場合も、恐ろしい伝染病という触れ込みだったが、結果的には弱毒化して、普通の風邪と大して変わらなくなった。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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