これは宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の四次稿をもとに、漫画化されているわけだが、必ずしも四次稿に忠実なわけではない。四次稿では削除されている場面でも、美しければ表現されているのだ。 天の川は銀河系の星々を横から見た姿と言われているが、ここでは文字通りの川となっている。そこには海に住むはずのイルカがはね回っている。川イルカも存在するのだから、決しておかしいわけではないのだが、賢治は三次稿の段階で削除してしまった。ますむら氏はそれを絵で表現したというわけだ。 この巻で最も目を引くの..

 これは宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の四次稿をもとに、漫画化されているわけだが、必ずしも四次稿に忠実なわけではない。四次稿では削除されている場面でも、美しければ表現されているのだ。
 天の川は銀河系の星々を横から見た姿と言われているが、ここでは文字通りの川となっている。そこには海に住むはずのイルカがはね回っている。川イルカも存在するのだから、決しておかしいわけではないのだが、賢治は三次稿の段階で削除してしまった。ますむら氏はそれを絵で表現したというわけだ。
 この巻で最も目を引くのは、氷河と衝突して沈没したとされるタイタニック号の乗客が、突然銀河鉄道に乗り込んでくるという場面である。家庭教師の青年が、子どもたち二人を何とかして助けようとしたが、助けられずに、神の御許に行くことを選んで、二人の子を抱きながら海中に飲まれる。気がつくと、天上世界に向かうこの列車に乗り込んでいたという設定である。船が沈む場面の悲惨な状況が、ますむら氏の絵で再現されている。
 カンパネルラは沈没した船に乗っていた女の子と親しくなる。二人が楽しげに話しているのを見て、ジョバンニはつまらなくなり、さびしさを抑えられなくなる。ススキがなびく川辺からは、青く光る天の川が美しい。美しいからこそ、ジョバンニのさびしさはいやまさる。あの世に去ろうとするカンパネルラとの別れを惜しんで、銀河鉄道に乗り込んだのに、その貴重な時間を一人で車窓から夜景を眺めていなければならないのだから。
 賢治の『銀河鉄道の夜』は、象徴的で色彩的な描写が書き連ねられていく。それが何を意味するかは、読者の解釈に任されている。想像力がよほど豊かで、場面を視覚化できなければ、文字だけで賢治が描いた場面を思い描くのは難しい。だからこそ、ますむら氏はこの作品を繰り返し漫画化してきたのだろう。登場人物を人間臭い表情の猫に変更したことと、彩色された漫画の美しさが特徴である。この筆遣いと色遣いのまま、アニメ化されたら、どれだけ息を呑むことだろう。


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