室生犀星の同名小説の映画化である。監督は石井岳龍、脚本は港岳彦である。現在はAmazonプライムで見ることができる。 小説を読んでいるので、原作にかなり忠実に映像化しているのがわかった。犀星がモデルの老作家を大杉漣が、金魚の赤井赤子を二階堂ふみが、幽霊のゆり子を真木よう子が、芥川龍之介を高良健吾が、金魚屋の辰夫を永瀬正敏が演じている。 原作では、赤井赤子は、金魚でありながら、人間の女に化けている。金魚の姿で老作家と戯れるわけだが、映画では赤いドレスを着た若い女に、老作家が抱..

 室生犀星の同名小説の映画化である。監督は石井岳龍、脚本は港岳彦である。現在はAmazonプライムで見ることができる。
 小説を読んでいるので、原作にかなり忠実に映像化しているのがわかった。犀星がモデルの老作家を大杉漣が、金魚の赤井赤子を二階堂ふみが、幽霊のゆり子を真木よう子が、芥川龍之介を高良健吾が、金魚屋の辰夫を永瀬正敏が演じている。
 原作では、赤井赤子は、金魚でありながら、人間の女に化けている。金魚の姿で老作家と戯れるわけだが、映画では赤いドレスを着た若い女に、老作家が抱きついたりするわけで、金魚でありながら人間に化ける変化自在な点が、うまく表現できているかは微妙である。冒頭を見ていると、谷崎潤一郎の『瘋癲老人日記』を連想してしまった。
 老作家はすでに人生の大半を生きてしまったので、過去の回想に耽ったり、怖いもの知らずで、若い女と愛し合ったりする。金魚という恋人がいるにもかかわらず。
 死んだ女ゆり子が、老作家を慕って現れるのだが、恥ずかしがり屋で遠目でしか眺められない。長い髪に白い着物といった出で立ちで、円山応挙の幽霊画のような姿をしている。それなのに、生身の女のようにおしゃべりするので、なぜが滑稽に見えてしまった。ゆり子は老作家に関心を持ってもらえないことを自覚して、あの世に姿を消してしまう。
 老作家が若い頃につき合った芥川を、高良健吾が演じている。絶望を抱えながら、冷めた目で世間を見据える姿は、服毒自殺した天才作家の雰囲気をよく出している。
 最後に、赤井赤子は猫に捕まり、死んだ姿で金魚屋に連れてこられる。老作家の空想であった赤子は、金魚として死ぬのである。ほどなくして老作家も亡くなり、空想的存在だった赤子と一緒に、亡き魂のまま妄念の世界をさまよい続けるのではないか。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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