ユンガーの『ヘリオーポリス』は、なぜ「魔的リアリズム」と銘打たれているのだろうか。それはSFの場合のように、ありもしない空間を、言葉の力によって現出しているからである。幻術師となって、目の前にヴィジョンを浮かび上がらせるのが、優れた作家の技なのだろう。 生み出された空間は架空であっても、それは現実に存在するものを組み合わせ、変形を加えたものに過ぎない。細部まで描写を怠らないという点で、現実を再現する狭義のリアリズムと、大きな違いはないのである。 そうした作品を描くには、日頃..

 ユンガーの『ヘリオーポリス』は、なぜ「魔的リアリズム」と銘打たれているのだろうか。それはSFの場合のように、ありもしない空間を、言葉の力によって現出しているからである。幻術師となって、目の前にヴィジョンを浮かび上がらせるのが、優れた作家の技なのだろう。
 生み出された空間は架空であっても、それは現実に存在するものを組み合わせ、変形を加えたものに過ぎない。細部まで描写を怠らないという点で、現実を再現する狭義のリアリズムと、大きな違いはないのである。
 そうした作品を描くには、日頃から注意力を研ぎ澄まし、目を閉ざした後も、脳裏にヴィジョンが描けるようにしておくことだ。そして、登場人物になりすまして、想像の空間で視線を巡らしてみる。その情景を言葉に写す際には、一つの対象を掘り下げて書くようにする。ただ、静止した事物だけでは、読者の精神は沈滞してしまう。動くものをありありと描写することで、文章に生気が漲ってくる。
 なお、『ヘリオーポリス』という長編の特徴として、街や登場人物を全体的に描き出すために、各章ごとに中心となる対象を選び、作品の中に多角的な視点を存在させている。それによって、一大パノラマを形成しているのである。

参考文献
エルンスト・ユンガー『ヘリオーポリス(上・下)』(田尻三千夫 訳 国書刊行会)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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