ヘルダーリンはドイツの詩人で、友人には哲学者のヘーゲルやシェリングがいた。古代ギリシャの汎神論的な世界に憧れを抱いていた。代表作は書簡体小説の『ヒュペーリオン』や劇詩の「エンペドクレスの死」である。統合失調症(精神分裂病)を患い、晩年の三六年間は個室に閉じこもったまま過ごした。 小説『ヒュペーリオン』は、古代ギリシャの汎神論的な、自然との一体感への希求が主題となった物語である。主人公のヒュペーリオンは「一なるもの」の存在に引かれている。 ヒュペーリオンはギリシャ独立戦争に参..

 ヘルダーリンはドイツの詩人で、友人には哲学者のヘーゲルやシェリングがいた。古代ギリシャの汎神論的な世界に憧れを抱いていた。代表作は書簡体小説の『ヒュペーリオン』や劇詩の「エンペドクレスの死」である。統合失調症(精神分裂病)を患い、晩年の三六年間は個室に閉じこもったまま過ごした。
 小説『ヒュペーリオン』は、古代ギリシャの汎神論的な、自然との一体感への希求が主題となった物語である。主人公のヒュペーリオンは「一なるもの」の存在に引かれている。
 ヒュペーリオンはギリシャ独立戦争に参加しようとするが、戦闘に加わることにためらいを感じる。親友のアラバンダは、ヒュペーリオンの幸せを願って、逃げ出した結社のもとに粛清されに行く。ヒュペーリオンはアラバンダに語りかける。「死にたまえ、きみの心情はあまりにも壮麗だ」と。友情を至高のものととらえ、友人の死の決意を崇高なものとして尊重する。
 一方、恋人ディオティーマは、ヒュペーリオンの「一なるもの」への思いに感化されていく。もし感化されなければ、素直なやさしい娘として一生を終えたかもしれない。ヒュペーリオンが死を決意していることを知って、ディオティーマは病を得る。恋人が死に、自身も死ぬならば、不可能なもの、死を通しての結合が成就するからだろう。
 僕がこの小説を読んだのは、昭和六十年、まだ大学三年生の時だった。あの頃は社会のことはまだ知らず、ロマン主義の世界に憧れを感じていた。当時の心情に合致したからこそ、素直に共感できたのだと思う。
 理想的な世界を守り続けようとしても、現実と衝突することは避けられない。生き続けるためには、理想が夢のように薄らぐのに耐えて、自らの生きる道を探らなければならない。それを拒絶して、内心の理想と美を守り通そうとすれば、ヘルダーリンのように精神を病まざるを得ないからだ。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

Telegram
https://t.me/takanoatsushi


にほんブログ村



人気ブログランキングへ







ランキングはこちらをクリック!

amzn_assoc_ad_type ="responsive_search_widget"; amzn_assoc_tracking_id ="faucon-22"; amzn_assoc_marketplace ="amazon"; amzn_assoc_region ="JP"; amzn_assoc_placement =""; amzn_assoc_search_type = "search_widget";amzn_assoc_width ="auto"; amzn_assoc_height ="auto"; amzn_assoc_default_search_category =""; amzn_assoc_default_search_key ="";amzn_assoc_theme ="light"; amzn_assoc_bg_color ="FFFFFF";
Twitter、facebookでの拡散、よろしくお願い致します!

Twitter Mentions