奇妙奇天烈な小説である。全文が対話でできており、地の文が一切ないのに、話し相手が変わったのも分かるように、巧みに書き分けている。犀星がモデルらしい老作家が、金魚とおしゃべりする物語である。 しかし、この金魚、ただの金魚ではない。老作家におねだりするし、買い物をしたり、歯医者に行ったりする。どうやら、女性秘書に化ける金魚なのである。掌の中で戯れたり、池の中で泳いで、メダカのしっぽをかじったりもするが。 それだけではない。老作家が若い頃に付き合った女の幽霊と、話を始めたりもする..

 奇妙奇天烈な小説である。全文が対話でできており、地の文が一切ないのに、話し相手が変わったのも分かるように、巧みに書き分けている。犀星がモデルらしい老作家が、金魚とおしゃべりする物語である。
 しかし、この金魚、ただの金魚ではない。老作家におねだりするし、買い物をしたり、歯医者に行ったりする。どうやら、女性秘書に化ける金魚なのである。掌の中で戯れたり、池の中で泳いで、メダカのしっぽをかじったりもするが。
 それだけではない。老作家が若い頃に付き合った女の幽霊と、話を始めたりもする。金魚には人間の幽霊が見え、幽霊には金魚が秘書に化けているのが分かる。
 しまいには、老作家の子供がほしいと言い出す。ただ、人間の子供は産めないので、オスの金魚との間に子供を作り、それを老作家の子供として育てる。祈ることで、金魚の顔は老作家に似てくるとまで言い出す。犀星そっくりの人面魚にでもなるのか。
 現実の犀星は、金魚を飼って世話をしたのだが、やがて弱って死んでしまった。生き物の死をそのまま書いても、面白くないだろうとして、作家が妄想を育むうちに、『蜜のあわれ』という逸品が生まれたのである。
 命ある物には、すべて心があるのなら、生物の限界を越えて、人間の肉体を持ったとき、金魚が生来の心を持ちながら、若い女性として振る舞うことはあるかもしれない。生身の若い女性とは、もはや戯れることができなくなった老作家の妄想、と言ってしまえばそれまでだが、小説という芸術自体、作家の妄想が昇華された物なのではないか。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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