作文教育について

　以前の日本語教育では、文型を教える教科書と、聴解と作文の教科書は別のものを使用していた。世界的に使用されている『みんなの日本語』のシリーズに、中級教科書が出てからは、各課のテーマに沿って、文型、読解、聴解、作文が、一冊の教科書で学べるようになった。　かつての作文の教科書では、各テーマに必要な語彙と文型、見本が提示されていたが、『みんなの日本語』では、日本語力が総合的に学べるようになったので、作文教育のために、語彙や文型を教える必要がなくなり、効率的に作文に時間が割けるように..

　以前の日本語教育では、文型を教える教科書と、聴解と作文の教科書は別のものを使用していた。世界的に使用されている『みんなの日本語』のシリーズに、中級教科書が出てからは、各課のテーマに沿って、文型、読解、聴解、作文が、一冊の教科書で学べるようになった。
　かつての作文の教科書では、各テーマに必要な語彙と文型、見本が提示されていたが、『みんなの日本語』では、日本語力が総合的に学べるようになったので、作文教育のために、語彙や文型を教える必要がなくなり、効率的に作文に時間が割けるようになったのである。
　例えば、『みんなの日本語　中級Ⅰ』の第２課では、外来語がテーマになっている。「あなたの国では外来語が使われていますか」という問いがあり、それをクラスの学生に紹介することが課されている。
　ただ、外来語に限ると、作文を書くだけの動機付けが難しい。そこで、「わたしの国の文化」というテーマで、学生に作文を書かせることにした。
　ただ、いきなり書けと言っても、学生によっては意欲が湧かない。教師の方から実際の例を提示することで、自分も書いてみようという気にさせるのである。
　作文を書いた上で、各学生にクラス内で発表させる。それによって、競争心も生まれるから、さらに意欲が掻き立てられるというわけである。発表に当たっては、写真などを提示することで、聞いている学生の興味を引くようにさせる。
　以下は「わたしの国の文化」というテーマで書かせる前に、教師の側から提示したサンプルである。既成の教材ではなく、教師自身が書くことが重要である。教材の準備にどれだけ時間をかけたかは、語らなくても学生に通じるものである。読み上げる際には、ルビを振ったスクリプトも渡しておく。自身で撮影した写真を、拡大して厚紙に貼りつけ、説明と同時に提示した。


　　　北海道の自然文化

　今日は北海道の自然文化について紹介したいと思います。日本列島には、原始時代、縄文人という人たちが住んでいました。目や鼻や口が大きく、顔の凹凸がはっきりしていました。その後、朝鮮半島から目が細く、顔が平らな弥生人が渡ってきました。この人たちが混血して、日本人が生まれました。しかし、北海道と沖縄では、朝鮮半島から来た人が混血しなかったので、北海道のアイヌ人と沖縄の琉球人は顔が似ています。
　北海道は昔、蝦夷地と呼ばれていました。アイヌ人の土地という意味です。北海道の南部に、日本人が住むようになったのは中世ですが、北海道全体に日本人が住むようになったのは、江戸時代からです。
　北海道の地名の多くはアイヌ語です。例えば、札幌はアイヌ語で「サトポロペッ」（乾いた大きな川）という意味です。北海道が日本の若者に人気があるのは、本州とはスケールの違った自然があるからです。
　これは摩周湖です。シベリアのバイカル湖についで、世界で二番目に水がきれいな湖です。火山の山頂が吹き飛んで、そこに水がたまった湖です。カルデラ湖と言います。北海道には、巨大噴火をする火山がたくさんあるので、美しい風景も多いのです。摩周湖は霧がかかることが多く、雲一つない姿が見られた人は、なかなか結婚できないと言われています。カルデラ湖には屈斜路湖や阿寒湖もあります。阿寒湖のマリモは、湖の水の流れで丸くなったものです。
　知床はアイヌ語で「シリエトク」、陸地の先端という意味です。世界遺産になったので、ご存じの方も多いでしょう。一年中曇ったり、霧がかかったりしているので、湖に山が映った姿や、赤い夕日が見られる人は運がいいです。
　北海道には多くの鉄道が敷かれましたが、自動車の普及で三分の二の路線が廃止されました。これは士幌線の橋でしたが、ダムができて湖に沈んでしまい、雨の少ない時期だけ見られる珍しい風景です。
　北海道の広さが感じられるのは、釧路湿原です。大昔は浅い海だった所です。日本でも地平線が見られるただ一つの場所です。湿原にはツルなどの大型の鳥やキツネが住んでいます。
　皆さん、豊かな北海道の自然に、ぜひ一度触れてみてください。北海道の風景がふるさとに似ているので、知床に移り住んでホテルを経営しているモンゴル人もいます。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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