高松の街は信号がほとんど見当たらない。まあ、四十年前のことだから、今はたくさん設置されているんだろうが。途中の道では石垣が見えた。高松城の遺構の一部で、堀は海とつながっていたから、海中に浮かぶ島のように見えたらしい。「讃州さぬきは高松さまの城が見えます波の上」と謡われていた。 さて、その日泊まる旅館の前まで来た。名前からして古めかしいので、いやな予感がした。古い木造の建物が見えたが、奥の鉄筋コンクリートの建物に入っていったから、良かったと胸をなで下ろしたのも束の間、新館に泊..

 高松の街は信号がほとんど見当たらない。まあ、四十年前のことだから、今はたくさん設置されているんだろうが。途中の道では石垣が見えた。高松城の遺構の一部で、堀は海とつながっていたから、海中に浮かぶ島のように見えたらしい。「讃州さぬきは高松さまの城が見えます波の上」と謡われていた。
 さて、その日泊まる旅館の前まで来た。名前からして古めかしいので、いやな予感がした。古い木造の建物が見えたが、奥の鉄筋コンクリートの建物に入っていったから、良かったと胸をなで下ろしたのも束の間、新館に泊まるのは先生と女子、他のクラスの男子で、僕たちは古い木造に案内されたのだった。
 部屋は広いものの、襖はガタガタいってなかなか開かない。床は傷んで畳も傾いており、大通りをトラックが通るたびに揺れる。こんな軋んだ部屋は初めてで、まるで化け物屋敷のようだった。それでも、床の間がついているから、昔はいい部屋だったんだろう。他の部屋などは、狭い上に窓もなく、壁ははげ落ちて貧乏長屋のようだった。
 広島のホテルではオートロックの個室だったが、これではロマンチックなことは起きそうにない。夜遊びが過ぎた僕のクラスは、懲罰のためにこんな部屋をあてがわれたのか。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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