ロープウェイ最終便まで、あと四十分ほどある。あわてず足下に気をつけて進めばいい。だが、意外に時間がかかるし、山頂の駅も見えてこない。 見えてきたのは四時過ぎだった。人懐っこい青年が話しかけてきた。並んでいるのは彼女だろう。「山頂に登っていたんですか」「ええ。距離は短いんだけど、傾斜がきつくてね。這うようにしてよじ登ったんですよ。手前で諦めて戻っていく人も多かったなあ」「それはうちらですよ」「いつ来たんですか」と問うと、今さっきとのこと。「でも、この風景が眺められれば満足です..

 ロープウェイ最終便まで、あと四十分ほどある。あわてず足下に気をつけて進めばいい。だが、意外に時間がかかるし、山頂の駅も見えてこない。
 見えてきたのは四時過ぎだった。人懐っこい青年が話しかけてきた。並んでいるのは彼女だろう。
「山頂に登っていたんですか」
「ええ。距離は短いんだけど、傾斜がきつくてね。這うようにしてよじ登ったんですよ。手前で諦めて戻っていく人も多かったなあ」「それはうちらですよ」
「いつ来たんですか」と問うと、今さっきとのこと。
「でも、この風景が眺められれば満足です」
 一緒に最終便のロープウェイに乗った。四時二十分だった。車体が中央の支柱辺りに来たとき、山際の窪みに夕陽がはまった。通り過ぎた山頂駅行きのロープウェイが、黒いシルエットになった。幻想的な美しさに息を呑み、すかさずシャッターを切った。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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