その家を訪れた最初の記憶は、僕が二歳くらいの時で、まだ妹は生まれていなかった。生卵が好きだった僕は、ポンと殻を割っては、パッと口に呑み込んでいた。ポン、パッと五つも……。 南武線の尻手駅に着くと、もう気持ち悪くなっていた。高架のホームには、茶色い木のベンチがあった。そこに横になると、風が吹いてきて涼しかった。覚えているのはそこまで。その日には何があったのだろうか。 祖母の家にはお彼岸と、年末・年始に訪れていた。年末に訪れたのは、餅つきをするためだ。伯父と父が交代で杵をつき、..

 その家を訪れた最初の記憶は、僕が二歳くらいの時で、まだ妹は生まれていなかった。生卵が好きだった僕は、ポンと殻を割っては、パッと口に呑み込んでいた。ポン、パッと五つも……。
 南武線の尻手駅に着くと、もう気持ち悪くなっていた。高架のホームには、茶色い木のベンチがあった。そこに横になると、風が吹いてきて涼しかった。覚えているのはそこまで。その日には何があったのだろうか。
 祖母の家にはお彼岸と、年末・年始に訪れていた。年末に訪れたのは、餅つきをするためだ。伯父と父が交代で杵をつき、義理の伯母が蒸した餅米を臼にあける。最初に杵で押すようにしてならすと、掛け声とともに、杵をつく。その合間に伯母が手を入れ、引っ繰り返す。息の合ったリズミカルな作業に、子供ながらも感嘆したものだった。
「もろぶた」という薄い木の箱に新聞紙を敷き、ついた餅を片栗粉にまぶして平らに伸ばしていく。日が暮れる頃には、新聞紙に包めるほどになり、風呂敷に包んで父が持ち帰ったものだ。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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