放射性の薬品をかぶってしまった主人公は、脳以外を機械に交換したサイボーグとなる。人間の意識は持っているが、普通の人間だった頃の肉体的な感覚は失ってしまったのだ。外見はロボットのようなので、人々からは白い目で見られ、耐えられずに地下室で暮らしている。感覚がなくなったといっても、夢の中では苦痛を感じているのだが。 ある日、テロリストが空から神経ガスをまく。それによって、街中の人々は意識を失い、路上に倒れ込んでしまう。停電と通信不能によって、何が起きたかと外に出た主人公は、防毒マ..

 放射性の薬品をかぶってしまった主人公は、脳以外を機械に交換したサイボーグとなる。人間の意識は持っているが、普通の人間だった頃の肉体的な感覚は失ってしまったのだ。外見はロボットのようなので、人々からは白い目で見られ、耐えられずに地下室で暮らしている。感覚がなくなったといっても、夢の中では苦痛を感じているのだが。
 ある日、テロリストが空から神経ガスをまく。それによって、街中の人々は意識を失い、路上に倒れ込んでしまう。停電と通信不能によって、何が起きたかと外に出た主人公は、防毒マスクをせずに、人々が動きを止めた大通りを進んでいく。
 テロリストは神経ガスをまくとともに、それを解毒する薬品も発明していた。人々が意識を失っている間に、国家を乗っ取ってしまい、人々が逆らっても、神経ガスを再びまくと脅す計画である。それを聞いた主人公は、許せないという人間らしい正義感で、テロリストのリーダーを射殺する。
 主人公は人々が凍ったように動かず、意識を失っているのが耐えられなかったのだ。ところが、意識を取り戻した人々は、以前と同じように、彼をいかがわしいサイボーグとしてしか見ない。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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