永井龍男は日常の場面を、巧みに切り取ってみせる。カメラマンが写真の一枚に、数多くの意味を込めるように。表現にてらったものはない。饒舌に説明してしまうこともない。 人物の心理描写もほとんどしない。簡潔にさらっと描く。登場人物の人となりは、会話によって表現されている。会話で物語を進行させると、密度が薄くなりかねないが、永井龍男の場合は、決してそのようなことはない。複数の人物の声を、会話で巧みに書き分けている。自己の思想を開示するような、頭でっかちの作家とは対照的なのである。 「..

 永井龍男は日常の場面を、巧みに切り取ってみせる。カメラマンが写真の一枚に、数多くの意味を込めるように。表現にてらったものはない。饒舌に説明してしまうこともない。
 人物の心理描写もほとんどしない。簡潔にさらっと描く。登場人物の人となりは、会話によって表現されている。会話で物語を進行させると、密度が薄くなりかねないが、永井龍男の場合は、決してそのようなことはない。複数の人物の声を、会話で巧みに書き分けている。自己の思想を開示するような、頭でっかちの作家とは対照的なのである。
「青梅雨」は永井龍男の代表的な短編である。老夫婦と養女、妻の姉の四人家族が、服毒自殺をしたという記事を掲げた上で、自殺前夜の一家の団らんを描いている。そこには死を予感させるものはほとんどない。あえて「死」を連想させる言葉を、避けているように見える。それは「死」の恐怖を封印し、「死」の直前まで平静でいようとする一家の姿である。養母と養母の姉を指して「二人とも、けさから、死ぬなんてこと、一口も口に出さないんです、あたし、あたし、えらいと思って」と泣き声を抑える春枝の言葉は、鬼気迫る雰囲気を如実に伝えている。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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