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星新一の「椅子」
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
Japanese - October 15, 2022 16:00Books Arts Society & Culture 日本文学 コンピューター ジャズ 電子本 電子書籍 文学賞 青空文庫 epub pdf 高野敦志 Homepage Download Apple Podcasts Google Podcasts Overcast Castro Pocket Casts RSS feed
私と彼は学生時代からの旧友で、ともに母を亡くしていたことで、親しい間柄になっていた。彼は社長をやっていた。半年前に金を貸し、久し振りに再会してみると、社長を辞めてしまい、廃屋のような家で自堕落な暮らしをしていた。ドイツで買い求めたという豪華な椅子に腰掛けて。 働いて金を返せと彼に言うと、金はないし、働く気もないという答え。私は激高して、彼を人間の屑だとののしり、彼の座っていた椅子を取り上げてしまう。この椅子だけは持っていかないでくれという哀願を無視して。 私は取り上げた椅子..
私と彼は学生時代からの旧友で、ともに母を亡くしていたことで、親しい間柄になっていた。彼は社長をやっていた。半年前に金を貸し、久し振りに再会してみると、社長を辞めてしまい、廃屋のような家で自堕落な暮らしをしていた。ドイツで買い求めたという豪華な椅子に腰掛けて。
働いて金を返せと彼に言うと、金はないし、働く気もないという答え。私は激高して、彼を人間の屑だとののしり、彼の座っていた椅子を取り上げてしまう。この椅子だけは持っていかないでくれという哀願を無視して。
私は取り上げた椅子に座ってみる。すると、幼時に母の膝にいた時のような安楽を味わう。それだけで満足してしまい、彼と同じように働く意欲を失ってしまう。何物にも代えがたい幸福で、あとは何も要らない。そんな魔力を持つ椅子だったのだ。
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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