ところが、二〇一九年(令和元)の台風十九号で大涌谷を巡る歩道が寸断され、噴煙の上がる地帯への接近が禁じられていた。黒たまごを作っていた小屋は、はるか上方にあるのだが、無人のリフトが卵を運んでいた。よく晴れ上がっているし、富士山も間近に見えたのだが、大量の自動車と観光客が押し寄せているため、駒ヶ岳で見たような清々しさはない。 大涌谷の噴煙が間近に見られないので、箱根ジオミュージアムを見学することにした。展示コーナーでは、大涌谷における温泉くみ上げの方法が、模型で説明されていた..

 ところが、二〇一九年(令和元)の台風十九号で大涌谷を巡る歩道が寸断され、噴煙の上がる地帯への接近が禁じられていた。黒たまごを作っていた小屋は、はるか上方にあるのだが、無人のリフトが卵を運んでいた。よく晴れ上がっているし、富士山も間近に見えたのだが、大量の自動車と観光客が押し寄せているため、駒ヶ岳で見たような清々しさはない。
 大涌谷の噴煙が間近に見られないので、箱根ジオミュージアムを見学することにした。展示コーナーでは、大涌谷における温泉くみ上げの方法が、模型で説明されていた。温泉水を直接くみ上げると、涸れてしまう恐れがある。そこで、貯水池の水をポンプでくみ上げ、噴き上げる火山ガスと攪拌させることで、温泉水を作り出す方法が取られている。大涌谷に見られる蒸気井は、この方法で温泉水を作り出しているのだ。
 大涌谷から強羅までは、ロープウェイに乗った。歩道が閉鎖されている現在、上空から噴気口を眺めるしかない。江戸時代までは地獄谷と呼ばれていただけに、植物も生えない陰惨な雰囲気と、温泉くみ出しの現場を見る好奇心が入り交じる。しかし、考えてみれば、箱根山の噴火口の上を、ロープウェイで通過しているわけだ。突然、噴火が始まったとしたら……。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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