新型コロナウイルスの蔓延で、世界中の都市が封鎖されたり、外出を制限されたりした。日本の場合は通勤や買い物は許されていたし、法律による罰則もなかったが、学校が休校になり、友人と飲食することも制限され、ウイルス検査もさせてもらえず、正体の分からぬ病と闘った人も大勢いたわけだから、社会的な影響は決して小さくなかった。 こうした社会状況で、ふたたび注目を浴びるようになったのが、アルベール・カミュの『ペスト』である。この作品を読み進めると、疫病のために自由を奪われた人々が、どのような..

 新型コロナウイルスの蔓延で、世界中の都市が封鎖されたり、外出を制限されたりした。日本の場合は通勤や買い物は許されていたし、法律による罰則もなかったが、学校が休校になり、友人と飲食することも制限され、ウイルス検査もさせてもらえず、正体の分からぬ病と闘った人も大勢いたわけだから、社会的な影響は決して小さくなかった。
 こうした社会状況で、ふたたび注目を浴びるようになったのが、アルベール・カミュの『ペスト』である。この作品を読み進めると、疫病のために自由を奪われた人々が、どのような反応を示すかがよくわかる。ペストと新型コロナウイルスという違いはあるにしても。
 ペストの感染が始まった当初は、人々は本気にしようとしなかった。やがて、オラン市が封鎖され、手紙も電話も遮断され、家族や恋人との連絡もつかなくなる。生活に制限が加わり、孤独という癒しがたい圧力がかかっても、人々は酒場に出て憂さを晴らしていた。
 やがて、感染が貧民街から中心部に広がると、街中から人の姿が消え、酷暑の熱風が吹きすさぶようになる。自宅に閉じ込められた人々は鬱屈し、ペスト菌を殺すために放火したり、略奪などの犯罪が多発するようになる。キリスト教の神父は、罪のない少年の死を目の当たりにして、信仰に揺らぎを感じ始める。民衆はキリスト教よりも、厄除けのまじないに走るようになる。ペストは人間の心を荒廃させる一方で、ペストと闘うための連帯を生み出す契機ともなる。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en


Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38


にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

amzn_assoc_ad_type ="responsive_search_widget"; amzn_assoc_tracking_id ="faucon-22"; amzn_assoc_marketplace ="amazon"; amzn_assoc_region ="JP"; amzn_assoc_placement =""; amzn_assoc_search_type = "search_widget";amzn_assoc_width ="auto"; amzn_assoc_height ="auto"; amzn_assoc_default_search_category =""; amzn_assoc_default_search_key ="";amzn_assoc_theme ="light"; amzn_assoc_bg_color ="FFFFFF";

Twitter Mentions