小田原城の天主閣（２）

　天守閣の中に入っていく。目を引いたのは、壁に掛けられた北条五代の肖像画である。北条早雲は、伊勢新九郎長氏と名乗り、生前は北条姓を名乗ったことがない。二代氏康はよそからの侵入者という印象をなくすために、鎌倉幕府の執権北条氏の姓を名乗ることにしたという。
　三代氏綱は領内に善政を敷いて、人望が高かったという。豊臣秀吉の小田原攻めで、籠城を主張した四代氏政は、まさかこれほど長期間にわたって、大軍勢に食糧を補給できるとは思っていなかったらしい。また、一夜にして現れた石垣山城に、度肝を抜かれたという。そこで、降伏を申し入れ、氏政は切腹、五代氏直は高野山にお預けとなった。後に許されたが、ほどなく病没。氏政の弟氏規の子孫は一万石の大名として、明治維新まで存続したという。
　小田原藩は、大久保氏、稲葉氏に続いて、再び大久保氏の領地となるが、富士山の宝永大噴火による火山灰と土石流で荒廃。一時、幕府に領地を返上し、復興の後に領地を戻された。明治三年から五年にかけて、小田原城は取り壊された。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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