森鴎外の『舞姫』を、初めて読んだのはまだ十代の頃で、老境に入りつつある今、四十年ぶりに読み返した。青年の時に覚えた感動がよみがえり、懐かしさを覚えた。主人公豊太郎の心の揺れや、恋人エリスの活き活きとした描写は、古文で書かれながらも、西洋文学から学んだリアリズムの成果が感じられる。 豊太郎は舞姫エリスと恋に陥り、そのために官職を解かれる。新聞社の通信員となって、エリスとその母との同居を始める。ついに、エリスは妊娠する。所用で向かったロシアから戻ると、エリスは笑顔で、産まれる子..

 森鴎外の『舞姫』を、初めて読んだのはまだ十代の頃で、老境に入りつつある今、四十年ぶりに読み返した。青年の時に覚えた感動がよみがえり、懐かしさを覚えた。主人公豊太郎の心の揺れや、恋人エリスの活き活きとした描写は、古文で書かれながらも、西洋文学から学んだリアリズムの成果が感じられる。
 豊太郎は舞姫エリスと恋に陥り、そのために官職を解かれる。新聞社の通信員となって、エリスとその母との同居を始める。ついに、エリスは妊娠する。所用で向かったロシアから戻ると、エリスは笑顔で、産まれる子はあなたに似て、黒い瞳をしているでしょ。この瞳、夢の中でしか見られなかった黒い瞳と言う。この場面に当時の自分は、最も心動かされたのを覚えている。
 結局、豊太郎は望郷と栄達への思いを断ち切れず、親友相沢の勧めに従って、妊娠したエリスを捨てて帰国を決意する。それを知ったエリスは発狂する。ヒューマニズムの立場からすれば、一人の女性の人生を狂わせた豊太郎は、許しがたいわけであるが、明治時代の価値観からすれば、自身の感情を押し殺して帰路に着いた豊太郎は、常識的な選択をしたことになる。苦渋の決断を下したところが、当時の読者の心を揺るがしたのだろう。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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