インターネットで「中国語は江戸時代に日本の言葉だった」という主張がされている。(https://www.youtube.com/watch?v=fvNyLNdTdZ8)これを聞いた外国人は誤解する恐れがある。「禁中並公家諸法度」は漢文で書かれているが、これは漢文に通じた学者が、公文書として記したものである。漢文を白文で読み書きできたのは、ごく一部の階層に限られた。徳川幕府が庶民に出した「慶安の御触書」なども、一部漢文を含んだ仮名交じり文で書かれている(http://sybr..

 インターネットで「中国語は江戸時代に日本の言葉だった」という主張がされている。(https://www.youtube.com/watch?v=fvNyLNdTdZ8)これを聞いた外国人は誤解する恐れがある。「禁中並公家諸法度」は漢文で書かれているが、これは漢文に通じた学者が、公文書として記したものである。漢文を白文で読み書きできたのは、ごく一部の階層に限られた。徳川幕府が庶民に出した「慶安の御触書」なども、一部漢文を含んだ仮名交じり文で書かれている(http://sybrma.sakura.ne.jp/329keiannoohuregaki.html)。これはいくらなんでも中国語ではない。
 漢文は古代中国語であり、文語であるので、中国語の白話(口語)とは異なる。東アジアは中国文化の影響が強かったので、公文書は朝鮮でもベトナムでも漢文で書かれた。ただ、日本の場合は、中国語では自由な表現ができないとして、万葉仮名が生まれ、それが仮名文字を生んだ。
 では、なぜ公文書は漢字仮名交じり文ではなく、漢文で書かれたのか。それは歴史の記録であり、東アジア共通の文字言語だったからである。漢文が日本や朝鮮、ベトナムの公用語だったからではない。漢字こそ真名、正字であり、ひらがな、カタカナは仮名、仮の文字と考えられたからである。権威のある正史は、仮の文字で書かれるべきではなく、東アジア共通の文字言語で記すのが正当と考えられたからである。それは中世ヨーロッパの宗教書がラテン語で書かれたのと同じである。ラテン語で書く学者がいたからといって、当時のフランス人やスペイン人がラテン語で話していたわけではない。
 ソシュールによれば、言語は文字言語(ラング)と音声言語(パロール)によって構成される。文字がなかったアイヌ語などは、音声言語だけであるが。公用語は「公の文書や公の場での会話に用いられることが認められた言語」(『日本大百科事典』〈湯川恭敏〉)である。音声言語が使われていなければ、たとえ文字言語が一部の階層に使われていても、公用語として使われていたことにはならない。海外渡航ができた初期を除けば、江戸時代の日本で中国語が話せたのは、通詞と一部の学者ぐらいだろう。
 なお、幕府の公文書などは、漢文といっても、変体漢文で書かれている。「正規の漢文とは違った、日本語の統辞法や表現が混じっており、また、日本語として読み下されることを期待して書記される文体」(『岩波日本史事典』)である。
 武家社会で漢文が重視されたのは、徳川幕府が儒教を重視したからであり、『論語』や『孟子』を読むことが、現代人が英語を学ぶように必須と考えられたからである。また、封建社会では庶民が政治を論じることなど、以ての外と考えられていたので、「知らしむべからず」という観点から、公文書が漢文で書かれたとも考えられる。


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