竜門峡入口までバスで六分。バス停を降りると、案内板を見て行程を確認した。徒歩二時間はかからないだろう。午後一時半前だった。日川にかかる竜門橋を渡ると、渓谷はかなり下の方に見える。道はコンクリートで固められ、よく整備されているようだった。水力発電所の裏手を過ぎる辺りから、次第に道幅が狭くなった。ただ、崖の脇を過ぎるときも、打たれた杭の間に鎖が張ってあり、怖い感じはしなかった。 ところが、山奥に進むにつれて、けもの道のようになってきた。杭も横倒しになっていたり、丸太の橋も朽ちか..

 竜門峡入口までバスで六分。バス停を降りると、案内板を見て行程を確認した。徒歩二時間はかからないだろう。午後一時半前だった。日川にかかる竜門橋を渡ると、渓谷はかなり下の方に見える。道はコンクリートで固められ、よく整備されているようだった。水力発電所の裏手を過ぎる辺りから、次第に道幅が狭くなった。ただ、崖の脇を過ぎるときも、打たれた杭の間に鎖が張ってあり、怖い感じはしなかった。
 ところが、山奥に進むにつれて、けもの道のようになってきた。杭も横倒しになっていたり、丸太の橋も朽ちかけていたり。金属製の橋の床はたわんでいた。一度は整備されたものの、長らく放置されてきた感じがした。通りを遮るように、蜘蛛の巣が二重にかかっているところを見ると、最近は人が余り通っていなかったのだろう。
 炭焼き窯の跡があった。窯の横壁が残っているだけだったが。全行程の半分ほど来ていた。太陽が出て青空も見えた。天鼓林という所は、峡谷の轟く音が響いて、太鼓のように聞こえるのだそうだ。確かに、低い音が轟いていると思ったら、雷神が叩く鼓の音だった。こんな所で雷に襲われたら、とんでもないことになりかねない。前日雨が降ったせいで、岩場は濡れているし、土の上はぬかるんでいる。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

Telegram
https://t.me/takanoatsushi

GETTR
https://gettr.com/user/takanoatsushi


にほんブログ村



人気ブログランキングへ







ランキングはこちらをクリック!

amzn_assoc_ad_type ="responsive_search_widget"; amzn_assoc_tracking_id ="faucon-22"; amzn_assoc_marketplace ="amazon"; amzn_assoc_region ="JP"; amzn_assoc_placement =""; amzn_assoc_search_type = "search_widget";amzn_assoc_width ="auto"; amzn_assoc_height ="auto"; amzn_assoc_default_search_category =""; amzn_assoc_default_search_key ="";amzn_assoc_theme ="light"; amzn_assoc_bg_color ="FFFFFF";
Twitter、facebookでの拡散、よろしくお願い致します!

Twitter Mentions