これは冒険物語の元祖のような作品である。スティーヴンソンの『宝島』やヴェルヌの『十五少年漂流記(二年間の休暇)』なども、その流れを汲む物語だろう。いや、それ以前に『千夜一夜物語』の中の「シンドバッドの冒険」こそ、冒険物語の祖というべきだろう。池澤夏樹のデビュー作『夏の朝の成層圏』も、無人島での生活を描き、冒険物語を脱文明の夢物語に仕立て上げた。 ロビンソン・クルーソーは、父の戒めに逆らって出奔、荒海で遭難しかけたことも教訓とせず、南米に渡って農地を開拓し、一財産を築いた。に..

 これは冒険物語の元祖のような作品である。スティーヴンソンの『宝島』やヴェルヌの『十五少年漂流記(二年間の休暇)』なども、その流れを汲む物語だろう。いや、それ以前に『千夜一夜物語』の中の「シンドバッドの冒険」こそ、冒険物語の祖というべきだろう。池澤夏樹のデビュー作『夏の朝の成層圏』も、無人島での生活を描き、冒険物語を脱文明の夢物語に仕立て上げた。
 ロビンソン・クルーソーは、父の戒めに逆らって出奔、荒海で遭難しかけたことも教訓とせず、南米に渡って農地を開拓し、一財産を築いた。にもかかわらず、奴隷貿易に手を出し、猛烈な嵐に遭って無人島に漂着。それから二十八年にもわたる島での一人暮らしが始まる。物語は島からの脱出で終わらず、故郷で両親の死を知った後のリスボンへの旅、山中での狼の群れとの闘い、さらには、かつての無人島への再訪と、とどまることを知らない。
 それはロビンソン・クルーソーの一代記を書こうとしたからで、読者を感動させて幕を下ろすとしたら、島からの脱出と故郷への帰還辺りまでだろう。後日譚まで語らずにいられない点では、古めかしさを感じさせないでもない。
 ただ、物語の大部分は主人公しか登場せず、難破した船から物品を取り出し、島の動植物を加工したりして、農業や牧畜業を営んだ上に、救い出した原住民やスペイン人を臣下とし、総督として君臨するまでに至る。これは原始時代から身分社会まで進んだ人類の歴史を、ロビンソン・クルーソー一人に疑似体験させているのである。
 島から小舟で脱出しようとして遭難しかけたり、人食いの原住民と争ったり、反乱が起きたイギリス船を奪還したりなど、読者を退屈させない仕掛けもあるが、極限状態に置かれた人間が、いかに自然を克服して生き抜いていくかという観点に興味が抱けなければ、この長編を読み切ることはできないだろう。

参考文献
デフォー『ロビンソン・クルーソーの生涯と冒険』(平井正穂訳 筑摩書房 世界文学大系『デフォー・スウィフト』所収


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en


Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38


にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

amzn_assoc_ad_type ="responsive_search_widget"; amzn_assoc_tracking_id ="faucon-22"; amzn_assoc_marketplace ="amazon"; amzn_assoc_region ="JP"; amzn_assoc_placement =""; amzn_assoc_search_type = "search_widget";amzn_assoc_width ="auto"; amzn_assoc_height ="auto"; amzn_assoc_default_search_category =""; amzn_assoc_default_search_key ="";amzn_assoc_theme ="light"; amzn_assoc_bg_color ="FFFFFF";

Twitter Mentions