これは河林満の芥川賞候補作の映画化である。水道局に勤める岩切は、滞納を続ける家庭の水道を止める仕事をしている。人々から命のもとである水を奪う仕事に、内面が壊れそうな気持ちを押し殺している。 あるとき、父親が家を出たままで、母親も育児放棄をしている恵子と久美子の姉妹と知り合う。電気も水も止められてしまったため、姉の恵子は万引きをして食いつないでいる。ただ、可哀想だと見られることに、恵子は我慢できない。 岩切自身も妻との間にすきま風ができて、妻子と別居している。水道局の仕事とし..

 これは河林満の芥川賞候補作の映画化である。水道局に勤める岩切は、滞納を続ける家庭の水道を止める仕事をしている。人々から命のもとである水を奪う仕事に、内面が壊れそうな気持ちを押し殺している。
 あるとき、父親が家を出たままで、母親も育児放棄をしている恵子と久美子の姉妹と知り合う。電気も水も止められてしまったため、姉の恵子は万引きをして食いつないでいる。ただ、可哀想だと見られることに、恵子は我慢できない。
 岩切自身も妻との間にすきま風ができて、妻子と別居している。水道局の仕事として、未納者の水道を止める仕事に、葛藤を抑えきれなくなっている。感情を激発させた恵子の姿を見て、岩切は恵子の家の水道栓を開き、渇水で止めていた公園の水道から水をまく。これはカーニバルのようなもので、一時的に現実の秩序が放棄されるに過ぎないのだが。
 ただ、すぐに岩切は取り押さえられる。留置場に収監され、退職するのを条件に釈放される。恵子と久美子の姉妹は、児童保護施設に移動させられる。ある日、渇水が終わってなみなみと水が張られたプールに飛び込む。岩切は息子を連れて海に行くことになる。さわやかな印象で映像は終わる。
 一方、河林満の原作は、重苦しい雰囲気に包まれた小説で、結末が映画とは全く異なる。恵子と久美子の姉妹は、鉄道で自殺してしまうからである。「文學界新人賞」の審査員をしていた中上健次は、どうして幼い姉妹を死なせてしまったんだと怒ったという。
 監督の高橋正弥は、姉妹が飛び込む行為を、悲惨な鉄道自殺から、念願のプールへの飛び込みにすり替えることで、本来この小説が持ち得た感動を、観客に伝えることに成功している。

 追記
 高橋正弥の映画『渇水』はAmazonプライムで見られる。


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