主人公は夜の散策をするうちに、体外離脱して宇宙への旅に出る。他の惑星の人物に憑依して、相手と語り合いながら、未知の宇宙を旅していく。そこでは船舶のような人類、小鳥のような人類、植物のような人類と、奇妙な人類のオンパレードである。ただ、博物誌を読んでいる感じで、その星の人類を論じる場合も、地球の人類の問題を引き写している印象が否めない。 物語は知的生命体の記述から、星を人工的に作り出したり、移動させる話へと発展する。さらに、星自体にも、星の集合体である銀河にも、意識や生死があ..

 主人公は夜の散策をするうちに、体外離脱して宇宙への旅に出る。他の惑星の人物に憑依して、相手と語り合いながら、未知の宇宙を旅していく。そこでは船舶のような人類、小鳥のような人類、植物のような人類と、奇妙な人類のオンパレードである。ただ、博物誌を読んでいる感じで、その星の人類を論じる場合も、地球の人類の問題を引き写している印象が否めない。
 物語は知的生命体の記述から、星を人工的に作り出したり、移動させる話へと発展する。さらに、星自体にも、星の集合体である銀河にも、意識や生死があることを知る。主人公の意識は拡張し、宇宙大の大きさになって、宇宙の誕生から未来の死に至るまで、見渡すことができるようになる。
 ついに、主人公は創造主であるスターメイカーと対峙する。ビッグバンによる宇宙の創成と、「光あれ」と命じた『聖書』の神の記述を踏まえた世界観が提示される。「神は愛なり」と言われながら、世界にはなぜ悪があるのか、不幸なまま見捨てられる者がいるのか。キリスト教の神学で論じられる問題を、主人公は煩悶しつつ探究する。
 壮大な構想でつづられた宇宙誌といった印象である。具体的な描写はなく、延々と抽象的な説明が続いていく。しかも、長大な連体修飾節が組み込まれた長文である。処理能力をはるかに超えた抽象語の連続には、苦痛を感じざるを得ない。
 小説には決まった形式がないと言われるが、イメージ豊かな描写によって、読者の想像力を刺激して、あたかも物語世界にいるかのごとく感じさせるのが、プロトタイプであると考えられる。その観点からすれば、この作品は小説ではない。作者の宇宙観を物語の枠組みで展開した、哲学的な随想のようである。
 ただ、具体的な描写が伴ったのでは、これだけスケールの大きな世界を描くことはできない。SF作家が創作する際のヒントが随所にちりばめられており、大いに創造力が掻き立てられる。アーサー・C・クラークやスタニスワフ・レムが絶賛したのも、なるほどとうなずける。

参考文献
オラフ・ステーブルドン『スターメイカー』(浜口稔訳 筑摩書房)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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